従業員エンゲージメントを高めるための施策として、1on1ミーティングに取り組む企業が増えています。しかし、1on1を実施しても効果を感じられない、人事考課面談と同じようになってしまうと感じている担当者や従業員は少なくないようです。
この記事では、1on1ミーティングが本来の効果を発揮していない原因とともに、1on1で従業員エンゲージメントを効果的に高めるポイントをご紹介します。
1on1ミーティングと従業員エンゲージメントの関係性
会社への愛着や貢献意欲を指す「従業員エンゲージメント」を高める取り組みは、生産性の向上や離職率の低下を図るうえで欠かせないものとなっています。この取り組みの一つとしてさまざまな企業で実施されているのが、上司と部下が1対1でコミュニケーションをとる「1on1ミーティング」です。
従業員エンゲージメントを構成する要素には「会社のビジョン・ミッションへの共感」「円滑なコミュニケーション」「成果の承認と適切な評価」があり、これらの要素を満たすには1on1ミーティングが有効とされています。
関連記事:従業員エンゲージメントの向上が企業にもたらす効果とは?企業の取り組み事例も紹介
●日清食品×慶應SDMが1on1ミーティングの有効性を実証
日清食品株式会社と慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科が実施した「従業員のエンゲージメントを高めるマネジメントに関する共同研究」では、エンゲージメントが高い従業員の「働き方」と「行動パターン」について総合的に分析されています。その結果、エンゲージメントの高い従業員には以下の特徴があることがわかりました。
- 上司と頻繁かつ気軽に1対1のコミュニケーションがとれる関係性を築いている
- 主体的に業務に取り組める
- 困難な場面で上司からのフォローを適切に受けている
また、研究で明らかになった「エンゲージメント向上のメカニズム」では、1on1を適切な頻度で実施することで上司による期待値の明示・賞賛が従業員の自信につながり、従業員エンゲージメントを向上させることがわかっています。
参考:日清食品グループ『日清食品と慶應義塾大学大学院が「1on1ミーティング」の有効性を実証』
1on1ミーティングで効果を感じられない原因
1on1ミーティングの有効性が実証される一方で、実施しても効果を感じられないという声も上がっています。1on1が本来の効果を発揮していない原因には以下の4つが考えられます。
●1on1の目的が「管理」になっている
1on1ミーティングで重要なのは、上司と部下の対話型のコミュニケーションです。部下の話に傾聴せず、一方的に課題やフィードバックを話すだけでは、従業員エンゲージメントの向上につながる1on1にはなりません。
1on1の目的は「管理」ではなくコミュニケーションであると認識し、部下が心を開いて本質的な会話ができるよう意識することが大切です。
●人事考課面談と混合してしまっている
1on1ミーティングを人事考課面談と混合してしまっているケースが少なくありません。1on1は上司と部下が信頼関係を構築し上司が部下の成長をサポートする場で、あくまで部下が主体となります。
一方で、人事考課面談は目標に対しての達成度や評価を上司から部下へフィードバックする場で、3か月や半年に1回の頻度で行われます。
1on1が人事考課面談のように上司が部下へフィードバックの場になってしまうと、部下は評価に影響するのではないかと安心することができず、率直に話すことができません。1on1は上司と部下のコミュニケーションの場であることを理解し、部下の話に耳を傾けることが重要です。
●あらかじめテーマを決めずに臨んでいる
何について話すか決めずに場当たり的に臨んでも、1on1ミーティングの効果は発揮されません。部下が日々の経験を内省し、自分の考えや価値観を言語化したうえで1on1による気づきを得るためには、事前に1on1で話すテーマを設定しておくとよいでしょう。
テーマは上司が一方的に決めるのではなく、部下が自由に設定する、もしくはいくつかの選択肢から選べるようにすることが望ましいです。
●次のアクションにつながるアドバイスができていない
1on1ミーティングで気づきを得ても、業務中の行動に反映できなければ意味がありません。課題解決や改善のためのアクションプランを一緒に考え、部下のパフォーマンスを最大化できるような「次のアクションにつながるアドバイス」をすることが大切です。
●上司による期待値の明示と賞賛がない
1on1ミーティングは部下の話に傾聴する場であると同時に、上司からの期待値を伝え部下の自信と自主性を育てる場でもあります。従業員エンゲージメントの向上に自信と自主性は欠かせないため、部下に求めるものや達成できていることを明確にし、言葉で伝えることが重要です。
従業員エンゲージメントを効果的に高める1on1ミーティングのポイント
1on1ミーティングで従業員エンゲージメントを効果的に高めるには、以下の7つのポイントを意識しましょう。
●心理的安全性を確保する
自分の考えが否定される心配がなく、安心して発言できる状態を「心理的安全性」といいます。心理的安全性の確保は部下との率直な対話を行う上で重要なポイントであり、1on1ミーティングでは部下の話に上司が共感を示し、考えを受け入れることが大切です。
●オープンクエスチョンで傾聴する
1on1ミーティングでは部下に対して傾聴の姿勢を示すことが大前提です。率直な対話を行うには回答の範囲や選択肢を制限せず、回答者が自由に考えて答える「オープンクエスチョン」が有効です。「なぜそう思うか」「今後どうしたいか」などの質問を取り入れることで、無意識に上司の考えを押し付けることなく、部下自身の考えを引き出せるでしょう。
●1on1の目的やテーマを設定する
1on1ミーティングをおこなう目的やゴールをあらかじめ明示すれば、形骸化を防ぐことができます。また、1on1で話すテーマを事前に設定しておくことで、部下が振り返りをしたり話す内容を考えたりする時間的余裕が持てるでしょう。
●努力を把握し褒める
数値に現れない仕事や努力を把握できることは1on1ミーティングの大きな利点です。部下の隠れた努力を1対1で聞き出し、評価に反映したり褒めたりすることで、部下の自信や会社への信頼につなげられるでしょう。
●話した内容を記録する
1on1ミーティングを実施したら、話した内容を履歴として残し、振り返りの際に活用するとよいでしょう。フィードバックやアドバイスを振り返ることで、継続的に行動計画を考えることができ、部下の成長につなげられます。
●継続的・定期的に実施する
1on1ミーティングは初めから完璧を求めようとせず、うまくいかなくても継続的に実施することが大切です。人事考課面談とは異なり、週に1回、少なくとも月に1回の頻度で実施する必要するとよいでしょう。
定期的に話す機会を持つことで、上司と部下の信頼関係の構築やコミュニケーションの円滑化につながるとともに、従業員エンゲージメントやモチベーション向上の効果も高めていくことができます。
●上司の面談スキルを高める
1on1ミーティングの効果を高めるには、傾聴側である上司の面談スキルを向上させることも重要です。1on1に必要な面談スキルには、傾聴スキルや質問スキル、指導スキルなどが挙げられます。管理職向けの研修などを導入し、部下に対するコミュニケーション能力を高めるとよいでしょう。
まとめ
従業員エンゲージメントの向上に有効と実証されている「1on1ミーティング」。効果を感じられない場合は、上司による期待値の明示がない、次のアクションにつながるアドバイスができていないなどの課題を解決する必要があります。
部下の心理的安全性を確保したり、隠れた努力を評価したりすることで従業員エンゲージメントが高まり、より効果を発揮する1on1ミーティングを実現できるでしょう。
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