従業員エンゲージメントの向上が企業にもたらす効果とは?企業の取り組み事例も紹介

従業員エンゲージメントの向上が企業にもたらす効果とは?企業の取り組み事例も紹介

 近年、従業員が会社に抱く愛着や貢献意欲を指す「従業員エンゲージメント」の重要性が人事領域において広まっています。会社と従業員が互いに信頼し合い、従業員エンゲージメントを高めていくためには、どのような取り組みをおこなえばよいのでしょうか。

この記事では、従業員の愛着心や貢献意欲が企業にもたらす効果とともに、従業員エンゲージメント向上のための企業の取り組み事例と、有効な要素をご紹介します。

従業員エンゲージメントの向上がもたらす効果

 従業員エンゲージメントとは、従業員が持つ会社への信頼や愛着、組織に貢献したいという意欲を指す言葉です。
近年、労働力人口の減少による人材不足の深刻化や、それに伴う企業における採用競争の激化、そして働き手の価値観の変化によって、従業員エンゲージメントの重要性は非常に高まっています。
企業と従業員の信頼関係や結びつきを表す従業員エンゲージメントの向上によって、企業が得られる効果・メリットには以下が挙げられます。

仕事の質と生産性の向上

従業員が自社の企業理念やビジョンに共感し、組織内でのつながりを感じることができれば、仕事に対するモチベーションの向上が期待できます。従業員が主体的に仕事に取り組むようになると、仕事の質や生産性の向上につながり、さらに顧客満足度や業績にもよい影響を与えます。

離職率の低下

従業員エンゲージメントが高い従業員は、給与や福利厚生といった待遇の面以外にも働く意義を感じています。そのため、従業員エンゲージメントが低い従業員と比べて定着率が高く、離職率が低い傾向にあります。さらに、従業員が働きがいを感じられる魅力ある企業は評判がよく、自社の採用活動にも好影響を及ぼすでしょう。

企業による従業員エンゲージメント向上のための取り組み事

 企業による従業員エンゲージメント向上のための取り組み事例を以下にまとめました。

●株式会社ベーシック:従業員の成長を人事制度を用いて促す「期待役割グレード制度」の導入

 WEBマーケティングツールの提供やメディア運営をおこなうベーシックでは、従業員一人ひとりが卓越した能力を身につけるための成長を支える仕組みとして、未来志向の人事評価制度「期待役割グレード制度」を導入しました。

同制度のポイントは、すでに従業員が身につけている能力ではなく、今後担う役割への期待をもとにグレードを決定することです。グレードに応じてミッションを与え、その達成基準によって評価をおこないます。

「どのような成果を出せるのか」を人事評価の基準にすることで、従業員の挑戦機会・成長機会を提供し、
働きがいや貢献意欲につなげています。

参考:【評価テーブル図解付き】ベーシック社の人事ポリシーと評価制度を公開します

●株式会社浅野製版所:従業員間での感謝を伝え合う「サンクスカード」の運用

広告制作のコンテンツデータベース化や制作のサポートをおこなう浅野製版所ではワークライフバランスと健康経営を中心とした働きやすい環境づくりに取り組み、経済産業省が認定する「健康経営優良法人」に2017年から6回連続で選定されています。

健康経営に関する取り組みの中でワークエンゲージメントの向上にも注力し、定期的な社員面談など40種類以上の取り組みを実施しています。また、従業員同士のコミュニケーションの促進に向けた取り組みとして、互いに感謝の気持ちを伝え合う「サンクスカード」を導入しています。

従業員が社内でどのように貢献しているのかを周囲が客観的に伝えることで、コミュニケーションの円滑化と成長意欲の向上につなげています。

参考:株式会社浅野製版所『当社の健康経営の取り組み内容を知りたい方

●株式会社ユーザベース:会社の行動規範を示す「7つのバリュー」の浸透

ビジネス情報インフラの提供をおこなうユーザベースは、従業員数が178名だった2017年にForbes JAPANの
「従業員エンゲージメントが高い企業トップ10」に選出されました。2022年1月時点の従業員数は806名、
シンガポールや上海などに海外展開しています。

同社では全社員共通の価値観となる「7つのルール」を定義し、組織で働くうえで軸にすべき考え方を定めています。

7つのルールを浸透させるための取り組みとしては、7つのルールを体現している従業員やそのエピソードを紹介する「YEAR BOOK」を年に1回発行。それぞれの個性や自由に働ける環境を大切にしながらも、全員が同じ価値観と方向性で働ける仕組みを構築しています。

参考:私たちについて | 株式会社ユーザベース コーポレートサイト – Uzabase

従業員エンゲージメントの向上に有効な6つの要素

 従業員エンゲージメントを高めるためには、従業員の多様なニーズに応えられる効果的な施策を打ち出すことが重要です。ここでは効果的な施策を打ち出す上でおさえておきたい、従業員のエンゲージメント向上につながる有効な要素をご紹介します。

経営陣の考えをオープンにする

会社への愛着心や貢献意欲を高めるためには、まず組織のトップである経営陣を信頼してもらう必要があります。経営陣の考えや目指す姿をオープンにし、従業員が理解できる機会をつくりましょう。
社内コミュニケーションメディアなどのオンラインの場、もしくはタウンホールミーティング(経営陣と従業員との対話の場)や1on1などリアルのコミュニケーションの場を定期的に設け、経営陣のメッセージを従業員に伝えていくことが大切です。

会社のビジョンを浸透させる

会社のビジョンを浸透させ同じ目標に向かって努力することは、組織の一体感を高め、従業員エンゲージメントの向上につながります。
社内全体にビジョンを浸透させるためには、ビジョンの目的をわかりやすく言語化して社内メディアや1on1で伝える、ビジョンに沿って行動した従業員を表彰するといった方法があります。

コミュニケーションを活性化させる

従業員同士の信頼関係や結びつきを強めるためには、社内コミュニケーションの活性化が不可欠です。コミュニケーションを生み出す方法には、フリーアドレス制の導入や社内報の発行、社内イベントの開催などがあります。
こうした施策は一方的に押し付けるのではなく、まずコミュニケーション活性化の重要性を周知し、全員が納得したうえで進めていくことが大切です。

仕事にやりがいを感じられる環境を提供する

従業員が成長できる環境を提供し、仕事のやりがいやモチベーションにつなげることも、従業員エンゲージメントの向上に有効な施策です。
定期的な面談をおこない目標達成をサポートする、仕事で挑戦する機会を与える、スキルや希望に合わせた人員配置を考えるなど、従業員が仕事にやりがいを感じられる環境をつくることが必要です。

ワークライフバランスを充実できる働き方を提供する

従業員に「これからもこの会社で働きたい」と思ってもらうためには、ワークライフバランスの実現が欠かせません。
テレワークやフレックスタイム制、時短勤務、特別休暇といったワークライフバランスを充実できる多様な勤務制度を導入し、仕事とプライベートのバランスがとれる働き方を提供しましょう。

公平かつ明確な評価基準を設ける

評価や待遇に対する不公平感は、従業員エンゲージメントの低下につながる要因となります。従業員に支持される人事制度をつくるには、評価者の主観に左右されない公平かつ明確な評価基準を設け、社内にオープンにすることが大切です。
そのうえで従業員へのフィードバックをおこない、本人の成長や課題解決までつなげることを心がけましょう。

まとめ

従業員エンゲージメントとは、従業員が会社に抱く信頼や愛着、貢献意欲を意味する言葉です。従業員エンゲージメントの向上は仕事の質や生産性の向上、離職の防止に効果を発揮し、勤務制度や評価制度の改善、コミュニケーションの活性化など、さまざまな方向から取り組むことができます。今回ご紹介した取り組み事例を参考に、自社に適した施策を考えてみてはいかがでしょうか。