人事面談とは?
人事面談は、組織運営や社員の成長において重要な役割を果たしますが、その意義や進め方を正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。
特に近年では、多くの労働者がストレスを感じている中で、1on1の様な効果的な面談が社員の満足度向上や業績改善に繋がると注目されています。
本記事では、人事面談が果たす役割や具体的な目的、またその進め方について詳しく解説し、組織と社員双方にとって有益となるポイントをご紹介します。
適切に行われる人事面談は、社員のモチベーションを高め業績向上にも寄与できるため、ぜひ重要性を再認識して頂ければと思います。
人事面談の種類
人事面談の種類は多く設定されているもので、下記の5種類になります。
・目標設定面談
・中間面談
・フィードバック面談
・1on1
・キャリア面談
【目標設定面談】
目標設定面談では、今期の目標について管理職(上司)・部下で行う面談です。
面談は期初に実施され、今期取組むべき内容に基づいた目標、目標に対して必要な手順のアドバイス、目標とその達成基準について管理職・部下の相互確認を行う場です。
上司は部下の目標設定が適切であるか、業務に基づいた内容・優先度の高い業務であるかを確認します。双方納得できる目標設定が出来た後、人事部への提出となります。
【中間面談】
中間面談は、目標達成状況について部下からは報告、管理職からは残り期間での達成に向けて指導・アドバイスを行う場です。
管理職は部下からの報告を受け、目標修正するべきか、話し合う機会ともなっています。
また、中間面談を行った方が良い理由としては、期末の面談時に管理職・部下で双方の評価に乖離が見られた際、納得感のある評価が得られにくくなるため、モチベーション低下を防ぐためにに実施します。
【フィードバック面談】
フィードバック面談では、期初目標に対し、達成内容について評価を伝える場です。
評価に加え、どれだけ課題をクリアできたか、成長した項目は何かを伝えられることがベストです。
結果と過程の双方の評価を得られることは、部下にとって公平な視点で見られていると感じることができ、次期の目標に対してモチベーションを保つことができます。
また、フィードバックは同じ内容でも部下への伝え方ひとつで、その後の業務の取り組み方に大きな差が出ることがあります。
それは改善点・指摘で終わるのではなく、ポジティブな内容でフィードバックをする方法です。
似た方法で「褒め言葉・指摘・褒め言葉」で構成されたフィードバックとして、サンドイッチ型フィードバックがありますが、ポジティブなフィードバックは褒めることではなく、「信じている」「期待している」といった姿勢を伝えるのがポイントです。
【1on1】
1on1では、他の面談と違い、管理職から部下へのフィードバックではなく、部下の主体性を活かす場となります。部下のモチベーション向上のほか、信頼関係を構築する効果があり、多くの企業で導入されています。
1on1の効果を実感するには、部下が「否定されない」と感じられる安心感が必要です。
安心感が必要な理由をマズローの法則になぞらえて説明したいと思います。マズローの法則では、人間の欲求は図の様に、5段階で構成されています。
下から、生理的欲求・安全欲求・社会的欲求
(図:所属と愛の欲求)・承認欲求、自己実現欲求がピラミッドの様にあり、下位の欲求が充たされると、次の階層の欲求が出現するといわれています。
3番目にある社会的欲求(所属と愛の欲求)は、何かしらの集団に所属しているという安心感と他者に受け入れられる感覚が充たされるための欲求です。
その次にある承認欲求は、他者に認められたい、尊敬されたいという欲求で成長や行動の原動力となっています。

即ち、組織で成長したいと自発的な考えを持つ部下に導くには、まずは、組織の一員であるという意識が必要であり、否定されない組織であることが確認できた(社会的欲求)後、次の成長を認めてほしいという承認欲求に移っていくと考えられるでしょう。
【キャリア面談】
キャリア面談では、今までの面談よりも中長期的な目標、将来的に活躍できる業務を知り、キャリアプランを明確にできる場です。
組織にどんな業務があり、どんなスキルが必要とされているかを把握し、管理職から部下に伝える必要があります。
部下と似たスキルを持って活躍している人物、経験を活かせる業務の紹介等も、成長できる組織であることを理解し、モチベーション向上や離職防止に効果があります。
人事面談の目的
このように人事面談は、社員が信頼関係を深め、個々の能力を活かし、組織全体の成果を向上させるきっかけと気づきを得る、重要な取り組みです。
更に、面談で得られる効果『代表的な3例』をご紹介致します。
1.社員の現状把握と成長の促進
社員の現状を適切に把握することは、効果的な人材育成と組織の成長にとって欠かせない要素です。
社員のスキルレベルの把握や、どのような課題や悩みを抱えているのかを正確に理解することで、組織として適切なサポートや育成計画を立てることが可能となります。
現状を見誤った場合には、社員に対して適切なサポートを行うことが難しくなり、成長の機会を見逃す可能性が高まります。
たとえば、特定のスキルが不足していると分かった際、育成やサポートが実行されないままでいると、業務効率・就労意欲の低下が生じる可能性があります。
人事面談を通じて一人ひとりの現状を把握し、それを基にしたスキル研修や能力を高める育成計画を立てることが大切です。
このような働きかけによって、社員自身の成長が促進され、個人だけでなく組織全体のパフォーマンス向上にも貢献する結果が得られるでしょう。
2.モチベーションアップ
人事面談は社員のモチベーションを高める効果的な手段です。
上司の具体的なコメントや感謝の言葉は、社員にとって大きな励みとなり、自己効力感や社会的欲求を満たすきっかけとなります。
組織や他者からの感謝や肯定的な評価は、達成感や遣り甲斐、自信に繋がるでしょう。
この様な体験が、次の目標にも前向きに取組む、自律した社員へと成長を進めていきます。
人事面談を通じて、社員一人ひとりの努力を具体的に評価し、次なるステップへのモチベーションを促すことは、自律した社員の育成と組織発展に非常に有効です。
3.今後の目標設定(キャリアプラン)
今後の目標設定を行うことは、社員の進むべき方向を明確化させる非常に重要なプロセスです。
社員は目標に向けて日々の行動を定めることができ、目標達成までの経験が業務遂行の行動力に繋がっていくのです。
社員と管理職間で将来目標の共有、キャリアプランの作成は、成長を促し、離職防止と組織全体の活性化に繋がっていきます。昨今の大転職時代においても強固な組織を築く礎となっていくでしょう。
ライン管理職によるケア
ライン管理職によるケアは、従業員のストレス軽減において非常に効果的です。
この理由は、ライン管理職が日常的に従業員と直接接触しており、彼らの状態を細やかに把握できる立ち位置であるからです。また、ライン管理職は事業主より、部下の健康状況についても監督する義務があります。
部下の業務負荷が明らかに増加していると感じた場合等、早めに問題に気づき、適切な業務調整を実施することが必要です。
このような迅速な対応により、従業員の負担とストレスを軽減するだけでなく、仕事へのモチベーションを維持することも可能です。
更に、1on1を活用し、定期的に従業員との対話の場を設けることで、職場で抱える不安や悩みを共有する機会を作り、従業員の心理的安全性を確保することもできます。
ライン管理者の役割は単なる管理を超えた、従業員の成長をサポートする大切な取り組みであると言えます。面談等のアプローチを積極的に活用することで、個々の従業員のパフォーマンスと満足度を高めるだけでなく、組織発展の成功に結びつけることができるのです。

面談以外の対策方法(心理的安全性の確保)
心理的安全性を確保することは、社員が安心して意見を述べられる環境を作る上で重要な要素です。
職場において従業員が自分の考えやアイデアを発言する際、心理的安全性が保証されていないと、誤解や否定を恐れて沈黙を選択する場合があります。
このような環境では、課題や潜在的な問題が表面化することが難しくなる上、組織全体の成長が停滞する原因にもなります。
心理的安全性がある職場では、社員は安心して意見を共有できるため、新しい提案や問題点が積極的に取り上げられます。
心理的安全性の向上は、組織活性化に必要な要素であり、組織全体の生産性向上や効率的な業務運営に貢献します。社員同士が互いに信頼関係を築き、意見を尊重する文化が広がることで、組織全体のパフォーマンスが向上し、企業の目標達成に寄与する可能性が高まります。
このような積極的な職場環境を構築するためには、経営層や管理職が率先して心理的安全性を重視する姿勢を示し、日常のコミュニケーションからその重要性を徹底していく必要があります。
心理的安全性の確保は単なる職場の雰囲気づくりに留まらず、離職防止や社員一人ひとりの成長と組織発展の基盤を築く鍵となります。
様々な面談に共通する人事面談の準備
人事面談には様々な種類がありますが、スムーズかつ効果的に進めるためには準備が大切です。
有意義な面談内容は、双方にとって有益な時間となる他、お互いの信頼を得るためのステップと言えるでしょう。
事前に面談の準備をすることで、相手の現状やパフォーマンスを正確に把握することが可能となります。これにより、具体的で現実的な会話が進み、問題点や課題をスムーズに話し合うことができます。
一方で、準備不足で臨むと、お互いの認識にギャップが生じたり、重要な議論が抜け落ちる、課題が把握できない、といった可能性が高まります。これは面談の効果を大きく損なう要因となるため、注意が必要です。
自己評価と目標の整理(社員側準備)
自己評価を通じて自身の業務内容や成果を棚卸します。
棚卸を行う事で、業務に対する自分の強みや改善点を整理するきっかけとなります。
どういったことにやる気を感じるか、苦手や課題を感じるか等、自身で振り返ることは大切な工程で、自身の成長や現状における課題を客観的に認識でき、人事面談での建設的な会話に繋がります。
自己評価と棚卸のデータを基に今後の目標を定め、キャリアプランを明確にしましょう。
目標設定が曖昧な場合、面談の終着点が具体性に欠けるだけでなく、将来像が掴めないことから、意欲を持って業務にあたる事が困難となる可能性があります。
これは組織内の活気や風土醸成に影響を及ぼすことがある為、社員側・管理職側の相互理解が必要です。
面談は一方通行の場ではなく、社員と組織の成長を促す大切な機会です。そのため、自身の状況を棚卸し、共有する意識が大切です。
社員の勤務状況や実績整理(管理職側準備)
管理職が人事面談を円滑かつ有意義に進めるためには、社員の就業状況や現在の業務内容や経験した業務を事前に整理することが重要です。この準備は面談の効果を高め、社員との信頼関係を深める基盤となります。
具体的には、業務の進捗状況を確認し、それが過去に設定した目標や期待された成果とどの程度一致しているかをデータとして把握します。また、過去の評価や業績推移を振り返ることで、パフォーマンスの強みや改善が必要な弱みを明確にすることができます。
更に、出勤状況、有給取得率、健康面に関するデータも確認することで、社員のワークライフバランスや全体的なコンディションを把握することが可能となります。
このように、収集した具体的な情報を基に面談の準備を行うことで、管理職が根拠のあるフィードバックを提供することができます。
事実に基づいたやり取りは、社員に対する信頼感や納得感を高め、彼らが前向きに働く意欲を引き出す助けとなるでしょう。社員側に寄り添った丁寧な準備は、より深い相互理解を生むだけでなく、組織全体のパフォーマンス向上にもつながるものです。
人事面談の進め方ポイント
人事面談をスムーズに進める方法を具体的に解説します。
面談の進め方には、面談中のコミュニケーション、傾聴のスキル、質問の引き出し方、次回面談の計画設定など、重要なステップが含まれます。
それら一つひとつを適切に実践することで、より充実した面談実施が可能となります。
面談の進め方について、それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
面談中のコミュニケーション
面談中に最も意識しなければいけないことは、双方向のコミュニケーションです。
一方的なコミュニケーションは、相手の意見や考えを十分に引き出せず、効果的な面談とは言えません。特に人事面談の場では、お互いの意見を交換することで信頼関係を構築し、双方の理解を深めることが求められます。
双方向のコミュニケーションを創り出す方法として、面談を行う社員の業務内容・就業状況を把握し、
思考を掘り下げる具体的な問いかけを実践する方法があります。
適切なコミュニケーションが取れている面談では、率直な考え、サポートやフィードバックが必要な事案を拾い上げることが可能となります。
次に実践したい方法として、心理的安全性の担保があることを社員に伝えることです。
心理的安全性は、仲が良い組織という意味ではなく、
①ミスなど報告しづらい内容も報告できる“話しやすさ”、
②自主的な“助け合い”、
③行動に移すことを称賛する“挑戦できる環境”、
④新しい視点や発想を打ち消さない“新奇歓迎”の4つの因子が高い状態です。
(出典/原田将嗣(著)石井遼介(監修)
「最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55」飛鳥新社 2022年))
心理的安全性は、発信者のポテンシャルでは作るものではなく、周囲の環境から成り立つものです。
面談の場だけのコミュニケーションとならない様にすることが、社員のエンゲージメント向上に繋がります。

傾聴のコツ
傾聴の姿勢を持つことは、あらゆる場面のコミュニケーションで効果が得られることは広く知られています。真に相手の話を聴くことで、より具体的な情報や本音を話してくれる可能性、相手からの信頼度が高まることが期待できます。
一方で、話を聴く姿勢が曖昧だと、相手は自身の意見が尊重されていないと感じ、コミュニケーションが滞ってしまうことがあります。
「傾聴」を実践するにあたり、様々な場面で用いられているのがロジャーズの3原則です。
「ロジャーズの3原則」 米国臨床心理学者 カール・ロジャーズ(Carl Rogers)提唱
1
共感的理解 (empathy, empathic understanding)
相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとする。

2
.無条件の肯定的関心 unconditional positive regard)
相手の話を善悪の評価、好き嫌いの評価を入れずに聴く。
相手の話を否定せず、なぜそのように考えるようになったのか、その背景に肯定的な関心を持って聴く。そのことによって、話し手は安心して話ができる。

3
.自己一致 (congruence)
聴き手が相手に対しても、自分に対しても真摯な態度で
話が分かりにくい時は分かりにくいことを伝え、真意を
確認する。分からないことをそのままにしておくことは
自己一致に反する。

傾聴がもたらす効果として、前述した心理的安全性のほか、発信者側の合理化の助け、成長の機会創出があると言えます。
傾聴を意識し、「聞く」だけでなく「聴く」ことに重きを置くことで、双方にとって意義のある時間を作り出すことが期待されます。
質問をすべて引き出す
心理的安全性や傾聴がうまくいくと、社員の質問や疑問が多々出てくると思います。
これらをすべて引き出すことは、人事面談において非常に重要な要素です。社員が抱える疑問点や不安をしっかりと聴き、それに対して適切に答えを示すことが、良好な信頼関係と組織発展に繋がります。
具体例として、業務プロセスにおいて社員が何らかの疑問を感じている場合、その質問を引き出すことが、プロセスの改善点の発見に繋がることがあります。
反対に、疑問や意見が表に出されない場合、それがやがて不満となりモチベーションの低下に繋がるリスクもあります。これを防ぐためにも、小さな質問や疑問を放置せず、逐一解消していくことが必要です。
社員からの些細な疑問であっても、真摯に向き合い、解決へのステップを一緒に考える姿勢を持つことが、人事面談をより有意義なものにするポイントです。
建設的かつ具体的なフィードバック
効果的なフィードバックを行う際には、内容を建設的で具体的なものにすることが重要です。
例として、面談から得られた質問や課題に対し、誰と何をいつまでに実行するのか、相手が次に取るべきアクションを明確にイメージできるようなフィードバックは、成長への原動力となり、改善を積極的に促します。
一方で、抽象的なフィードバックや、否定的な印象を与える一方的な解釈では、相手が困惑しやすく、モチベーションの低下を招く可能性があります。
目標設定に対してのフィードバックは、達成までの進捗を共有し、サポートすることで、相手は自身の役割と目標までに必要事項を明確に意識でき、意欲向上が期待できます。
面談後のサポート構造、建設的なフィードバックの実践は、面談そのものの価値を引き上げます。
本記事まとめ
人事面談には、目標設定面談・中間面談・フィードバック面談・1on1・キャリア面談とあり、社員のモチベーション向上、将来を見据えた目標設定、ストレス管理等、評価を伝えるだけの要素ではなく、非常に重要なプロセスとなっています。
そのためには、社員を知ること、育成することが背景にあることを知り、事前準備や面談が一方通行にならない様にすること、面談後のフィードバックが必要不可欠です。
面談だけでなく、心理的安全性を意識した職場づくりと傾聴スキルをもった管理者が発展する組織に導きます。
今回ご紹介したポイントを参考に、人事面談や従業員エンゲージメント向上、組織発展の第一歩を踏み出してください。

お読みいただき、ありがとうございます。
これまで飲食店・生命保険会社でマネージャーを経験。
人材管理・育成に興味を持ち、ステラスに入社。
就業環境の変化が激しい人事領域にお役立ていただける情報発信を目標としています。
JobSuiteメディア、ORDIA・MIMERITのNEWS配信、WEBマーケティングを担当しています。
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