人材ポートフォリオとは?重視される理由と作り方をわかりやすく解説

人材ポートフォリオとは?重視される理由と作り方をわかりやすく解説

 近年、人材の活用を進めるべく、その対策として多くの企業が取り入れ始めている「人材ポートフォリオ」。自社のビジョンを実現するうえで必要な人材の構成を可視化し、人材マネジメントの方針を決定づけるツールとして注目が集まる一方、「自社では明確にイメージできていない」「作成する方法がわからない」などの課題を抱える人事担当者も多いようです。

この記事では、人材ポートフォリオとは具体的にどういうものなのか、重視される理由や作成のステップ、ポイントとともにわかりやすく解説します。

人材ポートフォリオとは?

 人材ポートフォリオとは、経営戦略の実行に必要な人材の構成や運用を分析する手法です。社員一人ひとりの特性や強み・弱み、スキル、キャリアなどを把握し、人材のタイプを分類することで、自社の現状と理想との比較や部署ごとの人材の過不足を分析できます。採用活動や人材育成、人事異動、評価など、人材ポートフォリオを活かすことができる人事業務は多岐にわたります。

人材ポートフォリオを導入すると、今まで上司の主観に頼りがちで、可視化されにくかった社員の能力が明確化し、適材適所の人材配置が可能になります。一人ひとりの能力が最大限に発揮される配置を実現できれば、社員のモチベーションアップとともに、組織全体の生産性向上につながるメリットもあります。

また、自社における人材マネジメントの問題点を発見できるため、企業にとって重要な採用活動や人材育成をスムーズに進められ、経営戦略や事業計画の早期実現につながりやすくなることもポイントです。

人材ポートフォリオが重視される理由

 人材ポートフォリオが企業に重視される理由には以下が挙げられます。

  • 生産年齢人口の減少

 少子高齢化により生産年齢人口が減少し、労働力不足が深刻化している現代。企業の発展・存続のためにはいかにして人材を確保し、自社で活躍してもらうかが大きな課題となっています。限られた人数でそれぞれが最大のパフォーマンスを発揮し、業務を効率化し生産性を高めていくには、個々の能力を可視化・分析できる人材ポートフォリオの活用が欠かせません。

  • 働き方の多様化

 近年、終身雇用や年功序列制度などの画一的な雇用形態が崩壊しつつあり、女性の社会進出や高年齢者の積極採用や働き方の多様化が進んでいることも、人材ポートフォリオが重視される理由の一つに挙げられます。ダイバーシティや働き方改革の推進により、個々の多様性を尊重しながらワークライフバランスの実現を目指す取り組みが進展したことで、これまで以上に人材ポートフォリオを効果的に活用する必要性が高まっています。

  • VUCA時代の人材戦略

    VUCA(※1)と呼ばれる将来の見通しが立ちにくい時代において、人材の価値を最大限に引き出して組織を活性化し、中長期的な企業価値の向上を目指す「人的資本経営」への注目が高まっています。労働市場のグローバル化や流動化が進むなかで、自社の人的資本の情報を整理し、適切に人材への投資をおこなうために、動的な人材ポートフォリオの作成が企業に重視され始めています。
    ※1)「Volatility/変動性」「Uncertainty/不確実性」「Complexity/複雑性」「Ambiguity /曖昧性」の頭文字をとった用語。先行きが不透明で予測できない状態を指す。

    人的資本経営についての関連記事:

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人材ポートフォリオの作り方

 人材ポートフォリオを作成するステップ・流れについてご紹介します。

〇自社の事業計画・ビジョンを明確化する

 人材ポートフォリオは、自社の事業計画やビジョンをもとに作成することが大切です。企業として進むべき方向性や目標を策定し、人材ポートフォリオをつくる目的をはっきりさせておくことで、効果的に活用できるようなります。

〇人材タイプ(基準の軸)を策定し、人材を分類する

 例えば、基準となるX軸とY軸の2軸に「創造-運用」「個人-組織」などの指標を設定し、自社の人材を「クリエーティブ型」「マネジメント型」「エキスパート型」「オペレーション型」などのタイプ別に分類していきます。分類する人の主観が入らないよう、適性検査などのツールを用いて客観的かつ科学的におこなうのがポイントです。

〇理想と比較し分析する

 人材タイプに偏りがないか、あるべき理想の姿と現状にどの程度のギャップが生じているかをデータで把握し、比較・分析します。現在の視点と10〜20年後の中長期的な視点も踏まえて、これまであいまいで気づきにくかった懸念点や課題を明らかにすることがポイントです。

〇課題の解決へ対策を講じる

 課題を解決し、理想的な人材ポートフォリオに近づけるために講じるべき対策を検討します。適材適所に配置する際には、どのタイプの人材を社内育成し、どのタイプをアウトソーシングするのかなども戦略的に策定できます。人材活用においてどのタイプに重点を置き、優先的に投資するかを考えることが重要です。

人材ポートフォリオ作成のポイント

 これからの企業経営には、人材ポートフォリオで人材タイプを整理しつつ、自社の事業戦略やビジョンに適した人材の採用・育成・配置計画を策定し、必要な人的資本を明確にすることが求められます。正確な現状分析がおこなえるよう、人材ポートフォリオを作成する際は正規社員・非正規社員などの雇用形態を問わず、自社に関わるすべての従業員を対象にすることがポイントです。

また、人材ポートフォリオは人材をタイプ別に分類して組織を最適化するものであり、それぞれに順位や優劣を付けるものではないことを深く理解しておく必要があります。加えて、従業員一人ひとりにどのようなキャリア志向があり、開発にはどのようなサポートが必要なのかなど、企業が働く人の意思を尊重するような取り組みを並行しておこなうことも重要です。

まとめ

 人材ポートフォリオとは、経営戦略の実行に必要な人的資源の構成を予測・分析する手法をいいます。社員一人ひとりの特性を把握しタイプ別に分類することで、自社の現状と理想を比較しながら、最適な人材配置や採用・育成が実現できるツールです。

近年、人材ポートフォリオが重視される理由には、生産年齢人口の減少や働き方の多様化、VUCA時代の人材戦略などが挙げられます。企業が経営戦略や事業計画を立て、ビジョンを実現していくうえで、人材ポートフォリオの作成は欠かせないものとなっています。作り方のステップやポイントを参考に、自社の人材戦略を見直し・改善できる人材ポートフォリオを取り入れてみてはいかがでしょうか。