新入社員向けリモート研修を効果的に進めるには

新入社員向けリモート研修を効果的に進めるには

 2019年末から流行した新型コロナウイルス感染症。これが、多くの企業が急速に『リモート研修』を実施し始めたきっかけです。ただ、リモートワークすらもあまり浸透していなかったという状況で、「どのように行えば効果的なリモート研修になるのか」「一過性ではなく、今後も継続できるリモート研修の基本を知りたい」と悩む企業は少なくありません。

リモート研修で起こりやすい問題点

  ある調査によると、2021年の新入社員研修をオンラインで行った企業は全体の45%を占めています。しかし、リモート研修を実施した企業も、導入から日が浅く十分な経験値を得られていなくてもおかしくない状況ではないでしょうか。そのことを踏まえて、問題点と解決策を見ていきます。

参加者の集中力低下

 リモート環境下の集中力持続は、簡単なことではありません。一説によると、集中力の持続時間は最大で90分間ともいわれています。しかも、その間、集中力は15分周期でしか発揮できないとのこと。加えて、自宅でリラックスした環境ですから、集中力の持続はかなり難しいといえます。

リモート環境に適していない研修内容

 リモート研修はオフラインの集合研修やグループワークなどとは勝手が違い、「オフラインでは簡単にできても、リモートではスムーズにいかない」ということは珍しくありません。その多くはリモート研修の特性を考慮せず、オフラインでの研修内容をそのまま流用しようとしたことが要因でしょう。

コミュニケーションの場の消失

 リモート研修だと、参加者同士のコミュニケーション量が低下します。対面研修では休憩時間などに雑談もできますが、リモートの場合、休憩時間はマイクもカメラもOFFになり会話できません。その結果、開催時刻にWeb会議ツールの部屋に入り、研修後は一人で黙々と課題に取り組むことになりがちです。

質問しにくい環境

 リモート環境では、対面の研修に比べて質問や声をかけにくい状況になりやすくなります。ことに研修を進める側の態度が高圧的だったり、受講者同士の交流が通常から図られていない場合は、その頻度は低くなってしまいます。

リモート研修を効果的に進めるポイント

参加者の集中力が続く設計

 集中力が長く続かないリモート研修で、45~60分間隔での休憩時間が必要です。また、15分程度の短い科目をいくつかまとめて1コンテンツとし、テンポよく進めると集中力の維持に役立ちます。この他、講師が質問をしたり、参加者の議論時間を増やすなど、双方向性を重視した進行方法も効果的です。

ファシリテーターとサポーターのタッグによる進行

 ファシリテーターとは会議や研修などで参加者から意見を引き出し、議論を円滑に進める役割の人物です。しかし、リモート研修につきものの「繋がらない」「やり方がわからない」といった緊急事態には迅速に対応しにくい立場です。そこで、サポーターを一人配置しておくと、淀みなく研修を進められます。

参加者同士の交流時間を多めに設計

 新入社員にとって、研修の場で同期や会社の人と話ができると会社に溶け込む良い機会になりますから、グループディスカッションなどの時間を多めに設定することも重要です。その際、研修の内容だけでなくお互いの近況など雑談のような内容も組み入れて設計できると、関係性の構築にも役立ちます。

通信環境の整備

 まず参加者のインターネット環境が万全かどうかを確認しましょう。Wi-Fi環境がある人、そうでない人、さらには通信制限付きのWi-Fiという場合もあります。研修では大量のデータを消費しますから、適応していない参加者の環境は会社で整備するようにしましょう。

ディスカッションは4人以下

 Web会議ツールでのグループディスカッションでは、「話すタイミングが難しい」「同時に話し始めて譲り合う機会が増える」といった課題が発生します。この場合、参加者を4人以下に制限します。そうすれば参加者の顔をきちんと見られるためタイミングをつかみやすく、発言しない傍観者も出にくくなります。

ゲーミフィケーションの活用

 ゲーミフィケーションとは、ゲームのデザイン要素や原則をゲーム以外の物事に応用する取り組み。「ポイント制」や「レベル別の特典」といった要素を盛り込み、目標達成へのモチベーションを高めようとするものです。自宅という自由な環境下で気が緩みがちな参加者のモチベーションを高め続け、継続的な取り組みが可能になります。

質問しやすい環境の構築

 リモート研修の雰囲気は、講師の一言や表情で変わりやすくなります。たとえば、次のような話をすると参加者が感じているハードルを低くするでしょう。

・同じことでも、どんどん聞いてください
・私が既に話したことでも、聞いてください
・些細な内容でも、聞いてください

逆に禁句として代表的なのが、

・質問に答える際の「さっきも言いましたが…」
・「質問がなければ、終わります」

これらの発言は、参加者のやる気を下げたり、気を使って質問しにくくなる人を出してしまいます。


 リモート研修は対面の集合研修とは異なる設計や配慮、オペレーションが必要になりますが、一方でリモート研修だからこそ効果のある内容や設計もあります。それを最大化するには、何よりも参加者一人ひとりへの気配りが不可欠ではないでしょうか。