エージェントが「推薦したくなる会社」になるために (後編)

エージェントが「推薦したくなる会社」になるために (後編)

日本の採用市場において、人材エージェントは非常に重要な役割を担っています。
本コラムの前編は、「紹介する側と紹介を受ける側の「目線の違い」に思いを馳せる」ことで人材エージェントと「ビジネスパートナー」なることのメリットとポイントについてまとめました。
後編では「ビジネスパートナー」としての関係構築がもたらす人材エージェント経由採用における「コスト削減効果」について考えてみたいと思います。
前編をみる

受注確率が上がれば、料率が下がっても期待値は向上する

前編でも触れた通り、「人材エージェントのビジネスモデル」は、候補者となる人材の獲得を宣伝広告費などのコストをかけて行い、企業に紹介を行う際に、「入社する際の年収」×「紹介料率」、つまり「紹介手数料」で回収するモデルが一般的です。

この「紹介手数料」による売上を更に因数分解すると
売上の期待値=  販売単価(候補者の年収 × 紹介料率) ×  販売数量(紹介人数 × 入社率)
と表現することが出来ます。


前編で述べた通り、この式の後半、販売数量にあたる「紹介する人数 × 入社する確率」を改善することが、良い人材の紹介を優先的に受けられることにつながっていくわけですが、もう一つ、非常に重要な効果をもたらします。
これを説明するために、上記の人材エージェントの売上期待値の式に2つのパターンの具体的な数字を当てはめてみましょう。

パターン1
 (年収450万円×料率35%) × (人数5人 × 受注確率20%)= 売上期待値 157.5万円
パターン2
 (年収450万円×料率30%) × (人数5人 × 受注確率40%)= 売上期待値 270万円

いかがでしょうか?
パターン1と2では、前半の紹介料率と、後半の受注確率の大きさを変えています。

まず、人材エージェントの視点からこの2つのパターンを比べると、同じ労力(=紹介数は同じ)でもしっかり2名分の販売数量で受注をすることが見込めることで、紹介料率を下げ、「販売単価」は少し下げたとしても、パターン1よりも大きな売り上げが期待できる、ということになります。
これを採用する側である企業の視点から見ると、パターン2の場合、この人材エージェントに対して支払う合計金額は多くなっていますが、2名の採用に成功しているうえに、パターン1の場合に比べ「一人当たり採用単価」を22.5万円も低下することができています。
つまり、企業側も人材エージェント側も、「ビジネスパートナー」としての信頼関係が構築されることで、パターン1よりパターン2の方がより良い成果を上げることに成功しているのです。

ただし、労働人口の減少や職種ニーズの構造的変化により、人材獲得競争が激化している現在、人材エージェントがこうした料率変更の交渉テーブルについてくれるとは限りません。
料率交渉を行うことが人材エージェントとのビジネスパートナーシップを構築する真の目的である、と述べたいわけではなく、あくまで、人事採用担当者は前編でのべたような誠実な選考アクションを行い、一方で人材エージェント側に、期待するミッションとして
・募集要件にマッチする候補人材のサーチ
・候補人材に紹介を希望してもらえるような積極的な企業説明
・選考中の第三者的視点のアドバイス
・採用担当と一体となったクロージング
を求め、それに応えてくれる人材エージェントとの「パートナーシップ」がもたらす好循環の副産物、と捉えるべきと考えます。

採用担当と人材エージェントのビジネスパートナーシップ

採用の現場で、人材エージェントからの紹介数が減った、選考通過率が下がった、辞退が増えた、といった課題にぶつかった際、単に取引エージェント数を増やしていく前に、「エージェントが『推薦したくなる会社』」を目指すことが、採用できる数や人材の質のみならず、コスト面でも良い影響を及ぼすことにつながる、という意識の下で関係構築をおこなっていくことが重要である、と考えます。