戦略人事の実現に必要な4つの機能と、各社の取り組み事例を紹介

戦略人事の実現に必要な4つの機能と、各社の取り組み事例を紹介

 先行きが不透明なVUCA時代(※1)において、人事部に求められる役割は企業の経営戦略を実現するための経営パートナーシップへシフトしつつあり、近年は「戦略人事」が注目されています。外部環境が激しく変化する中で企業が市場優位性を確保するには、経営戦略と連動させた戦略人事への取り組みが欠かせません。

この記事では、現代の人事に求められている戦略人事とはどのようなものなのか、必要とされる機能や具体的な取り組み事例から詳しく解説します。

(※1)Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉。変化が激しく将来の予測が難しい状態を指す。

戦略人事とは

 戦略人事とは、戦略的人的資源管理(Strategic Human Resources Management:SHRM)を略した言葉です。企業の経営資源である「ヒト」の価値を最大限に引き出し、経営戦略の実現に寄与する人的マネジメントをおこなうことを指します。

人材不足の解消や業務効率化を考える「人事戦略」とは異なり、戦略人事では自社の経営計画や経営目標の達成に貢献できる人材の採用や育成、配置を考えます。戦略人事は経営戦略と連動した人事施策となるため、戦略人事がうまくいかなかった場合は経営計画の遂行や経営目標の達成に大きく影響することとなります。

近年、戦略人事が注目を集めている背景には、雇用スタイルやビジネス環境の変化が挙げられます。労働力不足やグローバル化の進行による従来の日本型雇用(終身雇用、年功序列など)の崩壊、また不確実性の高い時代を生き抜くために持続的な競争優位性を保つ必要性など、外部環境が大きく変化する中で人事部に求められる役割も変わりつつあるのです。

戦略人事に必要な4つの機能

 戦略人事を提唱した米国ミシガン大学教授のデイビッド・ウルリッチ氏によると、戦略人事を実現するには以下の4つの機能が必要です。

  • HRBP:HRビジネスパートナー

人事部が経営者のビジネスパートナーであると考え、経営戦略の実現のために積極的に参画していくことを指します。デスクの前で仕事するオペレーション業務だけではなく、各事業部門の現場に足を運んで人材・組織に関する課題やニーズを理解し、人的資源による解決を提案します。

  • OD&TD:組織開発&人材開発

経営戦略を実現できる組織づくりをおこなうために、従業員に経営目標や企業理念を浸透させるための施策を実行すること、また従業員のスキルやマインドに着目し、個々に必要な人材育成をおこなうことを指します。

  • CoE:センター・オブ・エクセレンス

高い専門スキルを発揮し、経営者や現場をサポートする「エクセレンス(優秀)な人事部」であることを指します。戦略人事において人事部が担う人的マネジメントは幅広く、優秀な人事部でなければ効果的な施策を実行することはできません。

  • OPs:オペレーションズ

従来の人事と同様に、採用に関する業務や勤怠管理、給与計算、人事システムの運用など、人事の基本業務を正確かつ効率的におこなうことを指します。戦略人事に積極的に取り組んでいくためにも、人事のオペレーション業務をおろそかにすることはできません

戦略人事の取り組み事例

戦略人事への関心が高まる中、いち早く戦略人事を実行している企業ではどのような取り組みがおこなわれているのでしょうか。

ここでは、戦略人事に取り組む企業の事例を3つご紹介します。

  • カゴメ株式会社

 ジョブ型人事制度への移行を進めているカゴメでは、働き方の変革を支える基盤として「生き方改革」を推進し、従業員が充実した人生を実現できるようサポートしています。

生き方改革の中で重要な役割を担うのが、HRBPによる従業員のキャリア開発支援です。HRBPには、製造部門・販売部門・事務部門での現場経験が豊富で、問題解決能力が優れている人材をそれぞれ1人ずつ抜擢しています。「こういったキャリアを目指したい」「家族のためにこの時期の転勤は避けたい」など、従業員のよき相談相手として仕事とプラベートの両面でヒアリングをおこない、個人の希望をタレントマネジメントシステムに集約。人事異動を決める際などに活用し、従業員の充実した人生を支えています。

また、従業員と面談を重ねる過程において、HRBPは会社の経営戦略を現場に浸透させる伝道師としての役割も担っています。

  • GEヘルスケア・ジャパン株式会社

従来のオペレーションを整備・最適化する人事組織は縦割り組織であるために、トップの判断に時間がかかることが課題となっていたGEヘルスケア・ジャパン。周囲とコミュニケーションをとりつつ、スピーディーに決断を下せるリーダーが求められていました。

そこで機動力のあるリーダー育成に集中するため、同社では事業部ごとにHRBPを配置する「HRBPモデル」を導入しました。HRBPの役割は、従業員が持つ可能性を有効化・活性化し、人的資産を運用するプロフェッショナルとして経営陣と肩を並べて、事業成長をサポートすることです。

戦略人事を導入し、事業戦略の実装支援をする人事組織へと変革することで、課題解決型の「攻めの人事」を実現しました。同社では現在、1人のHRBPが事業部門の約300人の従業員をみているとのことです。

  • 日清食品グループ

日清食品では、国内外にある事業会社の社長やホールディングスの執行役員をキーポジションとし、このポジションを担う候補者は将来有望な若手を含め200人必要とされていました。しかし、候補者としてリストアップできたのは半数の100人で、あと100人足りない状況となっていました。

そこで同社がおこなった施策は、企業内大学「グローバルSAMURAIアカデミー」の創設です。グローバル経営人材を内部で育てることを目的とし、マネジメントスキルや論理的思考力、語学力、異文化理解、リベラルアーツなどを幅広く学んでいきます。研修後もキャリアプランニングをおこない、世界で活躍できる人材を長期的かつ計画的に育てる仕組みを整備しています。

まとめ

 不確実性の高い時代で企業が競争優位性を保つために欠かせない戦略人事。人事部が経営者のビジネスパートナーとして事業に参画したり、次世代を担う人材開発を積極的におこなったりすることは、経営戦略の実現に大きく貢献する取り組みです。

自社で戦略人事を取り入れるなら、組織活性化プラットフォーム「JobSuite TALENTS」の導入がおすすめです。従業員のさまざまな情報を集約し、人事セクションによる各種プロジェクト管理を支援することでの戦略人事の実現と経営効率化を支援します。

会社に新たな価値を創造する人事を考える際には、ぜひ「JobSuite TALENTS」の導入をご検討ください。